【健康な赤ちゃんを望むママのためのミニ事典】

奇形の主要原因一覧

 

先天異常の原因は主に次のようなものです。

 

  1. 催奇性物質(薬を含む)
  2. 放射線
  3. 染色体異常(遺伝)
  4. 感染症

 

一つずつ解説していきます。

 

また、次の項目についても情報提供しています。

 

  • アルコールやたばこの影響
  • 神経管閉鎖障害と葉酸
  • 奇形防止のために親が出来る努力

1. 催奇性物質

母体が摂取または接触することで、胎児の先天異常の確率が高まるさまざまな物質があります。

 

そうした物質を「催奇性物質」といいます。

 

医薬品

病気を治すための薬が奇形をもたらすことがあります。

 

サリドマイドの例

1950年代に世界的規模で手足のない「アザラシ四肢症候群」の子供を生み出した悪名高き薬です。

 

ドイツの製薬会社による睡眠薬で、つわりの軽減用に胃腸薬にも配合されたため、妊婦に被害が広まりました。

 

これは薬剤の催奇性が知られていなかったために起きた悲劇です。

 

近年は薬の認可も厳しくなっていますが、新薬では起こりうることです。

 

妊婦が禁忌または用量制限のある医薬品

催奇性が知られているにも関わらず、有用なので使われている医薬品はたくさんあります。

 

抗てんかん薬、抗ガン剤に多いですが、片頭痛治療薬や胃潰瘍治療薬にもあります。

 

あれほど大問題を起こしたサイドマイドさえ、多発性骨髄腫やハンセン病の治療には使われています。

 

  • 妊婦が禁忌の薬は、妊婦には絶対に処方しない。
  • 妊婦の服用量に上限がある薬は、それを守る。

 

そういう前提で使用が認可されているのです。

 

薬の処方を受ける際は、妊娠の計画・可能性も含めて、医師に正確な情報を伝える必要があります。

 

医薬品以外の物質

さまざまな化学物質が催奇性を持ちます。

 

ダイオキシンの例

ベトナム戦争の際、米軍はゲリラの隠れ場所をなくすため、ジャングル全体を除草する「枯葉作戦」を実行しました。

 

その時撒かれた除草剤に含まれていた不純物ダイオキシンが原因で、ベトナムでは大量の奇形児が生まれました。

 

その代表が日本でも有名なシャム双生児(体がくっついた双子)のベトちゃん・ドクちゃんです。

 

ダイオキシンはゴミ焼却場の煙や灰に多く含まれている身近な化学物質です。

 

排出に環境規制がかかっていて一定の浄化がされているとはいえ、そういう場所に妊婦は近づくべきではありません。

 

水銀の例

工場廃液に含まれていたメチル水銀が原因で、50〜60年代に熊本県で発生した公害病の水俣病が好例です。

 

奇形や中枢神経の異常の新生児がたくさん生まれ、大きな社会問題となりました。

 

水銀はサメ、メカジキ、キンメダイ、鯨などに「生物濃縮」されやすい性質があります。

 

特に水銀汚染された海域でなくても、微量の水銀がこれらの生物の体内では蓄積されて濃くなっていくのです。

 

厚生労働省の文書は妊婦および妊娠の可能性がある人は避けるように勧告しているので、食べないようにしましょう。

 

栄養素の例

医薬品や化学物質に催奇性のあるものがあるのは理解できます。

 

しかし、栄養素の中にさえ催奇性物質があるので注意が必要です。

 

それはビタミンAです。

 

ビタミンA過剰摂取時の催奇性

ビタミンAはさまざまな作用を持つ必須の栄養素です。

 

卵、レバー、乳製品などに多く含まれています。

 

しかし、脂溶性のため体内に蓄積されやすく、過剰症が問題になりやすいビタミンです。

 

妊婦においては、過剰摂取は催奇性をもたらします。

 

ビタミンが催奇性を持つ場合があるなどとはにわかに信じがたいと思います。

 

そこで下記に出典を示しておきます。

 

内閣府食品安全委員会ファクトシート「ビタミンAの過剰摂取による影響」

 

このレポートには発症する奇形の詳細まで触れられていませんが、それは水頭症、口蓋裂(みつくち)、耳の形態異常などです。

 

厚生労働省「栄養機能食品の表示に関する規定」でも、ビタミンAについては次の「注意喚起表示」が義務付けられています。

 

「(前略)妊娠3 ヶ月以内又は妊娠を希望する女性は過剰摂取にならないよう注意してください。」

 

ただし、ビタミンAは妊婦に必要ない、有害だというわけではなく、あくまで過剰摂取が問題なだけです。

 

極端なビタミンA不足は逆に催奇性をもたらします。

 

妊婦、および妊娠を計画している人はビタミンAのビタミン剤や大量のレバーを食べてはいけません。

 

しかし卵や乳製品に神経質になる必要はなく、普通にバランスのよい食事をすればいいのです。

2.放射線

放射能(=放射線)は品種改良において人工的に突然変異を起こすのにも使われます。

 

放射線は細胞の設計図であるDNAに書かれた遺伝情報の一部を破壊し、書き換えるのです。

 

妊婦がもし被爆した場合、当然奇形児が生まれる危険があります。

 

妊娠初期ほど奇形の危険

放射能によって奇形が発生する率は、細胞分裂が盛んな時ほど高いことがわかっています。(ベルゴニー・トリボンドーの法則)

 

それはつまり、妊娠2か月までの妊娠初期です。

 

妊娠2か月以降は奇形の心配は減りますが、小児白血病の危険は残ります。

 

白血病になる感度は大人が同じ量を被ばくした場合の2〜3倍にも及びます。

 

放射線検査の注意

現実的に妊婦さんの被ばく機会は主にレントゲン検査でしょう。

 

問題となるのは「被ばくした時期」と「胎児への被ばく量」です。

 

簡単に言い直せば「いつ、どんなX線検査を受けたか」が問題になります。

 

この値を超えると影響が出る可能性がある、という値を「しきい値」といいます。

 

胎児に奇形の影響が出やすい時期は、器官形成期である妊娠4〜10週目。

 

その際のしきい値は100ミリシーベルトと言われています。

 

ただし、それ以前の胚の段階では50ミリシーベルトをしきい値として胚死亡の危険があります。

 

そしてそれ以後も妊娠17週目までは120ミリシーベルトをしきい値として、精神発達遅滞等の危険があります。

 

胸部レントゲンや頭部CTは影響ないとされていますが、妊娠期には不必要な被ばくは避けるにこしたことはありません。

 

母体に大きな危険がある場合以外は避け、やむを得ない場合は医師とよく相談しましょう。

 

原発事故の拡散放射性物質の注意

原発事故からかなりの時間が経っています。

 

現実には、何らかの影響が出るほどの被爆のリスクは小さいと思います。

 

しかし、母になる者として最善の注意を尽くされるのは構わないと思います。

3.染色体異常(遺伝)

両親から受け継いだ遺伝子の問題で発生するものです。

 

奇形の原因の中で大きな比率を占めますが、予防のためにできることはなく、早期検査くらいです。

 

代表的なものは次の5つです。

 

ダウン症
  • 発症率は1,000人に1人
  • この症状について発表した19世紀の英国の眼科医ジョン・ラングドン・ダウンの名が由来
  • 21番染色体が3本あること(トリソミー)によって起こる
  • つりあがった目と低い鼻の独特の容貌、低身長、知的障害、先天性心疾患などが特徴
18トリソミー
  • 発症率は5,000人に1人
  • エドワーズ症候群ともいい、18番染色体が正常より一本多い3本であることで起きる
  • 女児に多く、小さい顎など独特の容貌と指の重なりなどを伴う
  • 成長障害や精神発達遅滞が著しい
  • 流産、死産が多く、生後も1年以内に9割が死亡する
13トリソミー
  • 発症率は5,000人に1人
  • 別名パトウ(ペイトウ)症候群。13番目の染色体が3本あることで起きる
  • 口唇裂、無眼球症、多指などが見られ、脳奇形や心臓奇形はほぼ必発
  • 1か月以内に50%、1年以内に90%が死亡する
ターナー症候群
  • 発症率は2,000人に1人
  • 女性は普通X染色体が2本だが、1本しかないことで起きる
  • 知能は正常だが、低身長で先天性心臓疾患が多い
  • 二次性徴がなく(例えば乳房が膨らまない)、無月経で、性交は可能だが妊娠はできない
クラインフェルター症候群
  • 発症率は500人に1人
  • 男性でX染色体が1つ以上多いことで生じる
  • 女性的なほっそりした体つきになることが多く、乳房が発達する場合もある
  • 体が弱く病気がちで、心臓病や精神薄弱を伴うことが多い

 

このほかにも数々の遺伝子疾患による奇形症状があります。

アンジェルマン症候群、ウィリアムズ症候群、プラダー・ウィリー症候群、カルマン症候群、アルカイディ症候群、コルネリア・ド・ランゲ症候群、ルビンスタイン・テイビー症候群、ミラー・ディッカー症候群、アペール症候群など

 

さらに外見は普通だが心臓をはじめとする内臓奇形、ある種の酵素を欠いていたりする先天性内分泌疾患など、遺伝子疾患は多くの種類があります。

 

優性遺伝と劣性遺伝

遺伝形質には優勢と劣性があります。

 

優性というのは、両親の片方から引き継いだだけで子供に現れる形質です。

 

劣性というのは、両親の両方から引き継いだ時のみ子供に現れる形質です。

 

よい形質も病気や奇形の形質も、優性か劣性のどちらかです。

 

優性が優秀で劣性が悪いという意味ではないので注意してください。

4.感染症

母体にとっては症状は軽いが、妊娠中の感染によって奇形や重い母子感染症の危険がある病気というものがあります。

 

昔から知られているのは風疹です。

 

最近ではほかにもそういう病気が判明していて、TORCH症候群(トーチしょうこうぐん、英: TORCH syndrome)と総称されています。

 

TORCH症候群

  • Toxoplasmosis(トキソプラズマ症)
  • Other(その他多く:B型肝炎ウイルス、コクサッキーウイルス、EBウイルス、梅毒、水痘・帯状疱疹ウイルスなど)
  • Rubella(風疹)
  • Cytomegalovirus(サイトメガロウイルス)
  • Herpes simplex virus(単純ヘルペスウイルス)

 

このリストの中にはいくつかの性感染症が含まれています。

 

その予防には配偶者以外の人と性交渉を持たないのが最も効果的です。

アルコールやたばこの影響

多くの方が疑問に思うのが、「飲酒や喫煙はどうなのか?」ということです。

 

メルクマニュアルの見解

お酒とたばこについては、いろいろな意見がありすぎるので、まず「メルクマニュアル」を見てみましょう。

 

「メルクマニュアル」とは、1899年にメルク・アンド・カンパニーが創刊した家庭用医学事典で、世界中に普及しているものです。

 

メルク・アンド・カンパニー(Merck & Co.)は米国ニュージャージー州に本社があり、世界140か国以上で事業展開する巨大製薬企業です。

 

ドイツの化学・医薬メーカー、メルク(Merck KGaA)とは別で、区別のために「米国メルク」と呼ばれることもあります。

 

要約
アルコール
  • 自然流産のリスクを増大させる
  • 大量飲酒は胎児アルコール症候群を1000出生あたり2.2件の確率で引き起こす
  • 胎児発育遅延、顔面ならびに心血管系の欠損、神経機能障害、精神遅滞の危険あり
ニコチン
  • 流産、身体的、知能面の発育不良
  • 無脳症、先天性心疾患、口腔顔面裂等の危険あり

 

肯定的な人々の見解

メルクマニュアルはお酒とたばこについて極めて否定的です。

 

しかし、日本では妊婦に対して全面的な禁酒・禁煙が当然視されている状況にはありません。

 

お酒好きでヘビースモーカーでも元気な赤ちゃんを産んでいるママがたくさんいることも事実です。

 

これをもってアルコールやたばこは影響ないと断言する人もいます。

 

当サイトの見解

ニコチンとアルコールの危険度がどの程度かという評価は下せません。

 

しかし、赤ちゃんの体内にそんなものが流れ込むのが良いことではない、ということだけは確かではないでしょうか?

 

なるべくなら禁酒・禁煙すべきだし、どうしても無理なら量を控えるべきだと考えます。

神経管閉鎖障害と葉酸

ここで非常に簡単で効果のある先天異常防止の方法をお伝えしておきます。

 

「神経管閉鎖障害」という先天障害は、葉酸というビタミンを摂取するだけで発生率が半分以下になるのです。

 

欧米では妊活段階から葉酸サプリを飲むことが常識化しています。

 

日本でも厚生労働省が2000年から啓発を始めて、ようやく普及してきました。

 

母子手帳にも載っていることなので、ぜひ取り入れていただきたいと思います。

 

神経管閉鎖障害とは?

脳と脊椎のもとになる「神経管」という器官が出来る時に、きちんと閉じて管状にならないために起きる先天障害です。

 

上部が閉じなかった場合は、「無脳症」といって、脳と頭頂部が欠落した状態で生まれてきます。

 

死産、または1週間以内に死亡することがほとんどです。

 

下部が閉じなかった場合は「二分脊椎」といって、脊髄が背骨にくるまれずにむき出しで生まれてきます。

 

歩行障害と排尿障害を伴い、一生介護が必要になるケースが多いです。

 

神経管閉鎖障害の通常の発生率は10000人に6人くらい。

 

ダウン症よりは少ないですが、そんなに稀な先天障害でもありません。

 

葉酸とは?

ビタミンB群の一種で、正常な細胞分裂と造血に不可欠です。

 

妊娠初期には必要量が約2倍になりますが、知らずに過ごして葉酸不足になることが多いです。

 

妊娠初期に必要な量を十分摂ることによって、神経管閉鎖障害の発生率は50%から70%も下がることが知られています。

 

さらに詳しい神経管閉鎖障害と葉酸サプリの情報はコチラ

奇形防止のために親が出来る努力

奇形の原因をおおむね説明しました。

 

親として予防のために何ができるのか?すべきなのか?まとめてみましょう

 

一般レベル

特別に先天異常の心配がない場合は、下記のようなことに気を付けて過ごせば十分です。

 

食事と生活
  • 葉酸サプリを必ず飲む
  • レバーをたくさん食べない
  • ビタミンA剤は飲まない
  • カジキ・マグロなどの遠洋魚など、生物濃縮の危険のある魚を食べない
  • 禁酒・禁煙。無理な場合も極力量を控える
  • ゴミ焼却工場や廃棄物置き場などに近づかない

 

ゴミ焼却工場等の問題については、横浜市立大学先天異常モニタリングセンターのホームページに次の記述があります。

 

最近塵芥処理場からの内分泌撹乱科学物質等の発生が見られると言う事実が証明され、それらの物質はごく微量でも障害を与える可能性がある事が指摘されはじめ、その周囲にすむ妊婦の胎児への影響が懸念され、今後の検討課題として注目されている。

 

現在の汚染物質の規制をクリアしていても潜在的な危険はあるかもしれないということです。

 

極力接近を避けましょう。

 

医療機関や薬局で
  • 受診する時は必ず、妊娠中・妊娠計画中であることを、医師に事前に告げる。
  • 薬の処方を受ける時は、胎児への影響を必ず確認する。
  • 不要不急のレントゲン検査やCT検査を受けない。
  • やむを得ない場合は胎児への被ばく影響を必ず確認する。
  • 薬局で薬を買う時も、必ず妊婦に影響がないか確認する。

 

感染症について
  • 胎児に影響のある感染症を持っていないか、夫婦ともに早めに検査する。
  • 配偶者以外の人と性交渉を持たない

 

あとは自分たちの判断により、出生前検査で早めに赤ちゃんの無事を確認することです。

 

ハイリスク出産の場合

  • 血縁者に先天異常の人がいる。
  • 血縁者で先天異常の出産歴(死産を含む)のある人がいる。
  • 当人のいずれかが遺伝病を抱えている
  • 母親が糖尿病などを持っている。
  • 死産・早産・先天異常の出産歴がある
  • 高齢出産

 

このような場合は最初から専門医のカウンセリングを受けるべきです。

 

検査により事前に危険因子を洗い出してくれます。

 

必要な場合は次のようなリスク回避技術もあります。

 

  • 精子提供を受けての人工授精(精子に問題がある場合)
  • 卵子提供を受けての人口受精(卵子に異常がある場合
  • 体外受精を行い、胚の遺伝子検査を行ってから子宮に移す